発生主義と実現主義・現金主義のちがいをわかりやすく!費用収益対応の原則についても解説!

会計処理の仕方には「発生主義」「現金主義」「実現主義」の3つの方法があります。
この記事では、これらの会計処理の違いや使い分けについて解説するとともに、費用収益対応の原則についても紹介します。

目次

1.発生主義とは

(1)発生主義の基本

支出・収入の発生が確定した時点、つまり取引が発生したタイミングで金額を計上する方法を「発生主義」といいます。
例えば、11月10日に2,000円分のコピー用紙を購入して、支払いを11月30日にした場合、実際に購入をした11月10日の日付で帳簿に記載をします。その後、支払いを行った11月30日にも支出の記帳をおこないます。

(2)費用の場合は発生主義

発生主義の考え方が用いられるのは、対象が「費用」の場合です。収益の場合は発生主義は用いません。
費用は現金の支払いタイミングと取引が発生する(サービスを受ける)時期とでズレが生じる場合があります。
例えば12月決算の会社が、月50万円の家賃で事務所を借りており、毎月支払いをおこなっていたとします。
11月分までの家賃は毎月現金で支払っていましたが、12月の家賃だけは手違いで支払いが遅れてしまい、翌年1月に2ヶ月分をまとめて払いました。
この場合、損益計算書に計上される家賃は実際に今年度払った11ヶ月分、としたいところですが、「費用は発生主義に基づいて計上する」のが原則ですので、12ヶ月分として計上します。

2.現金主義とは

(1)現金主義の基本

取引が発生したタイミングではなく、実際に支払いをおこなったタイミングや入金があったタイミングで計上するのが「現金主義」です。
お金の動きをそのまま記帳するので「おこづかい帳」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
現金主義による計上は個人事業主の確定申告(青色申告の特別控除)のみに認められています。

(2)発生主義と現金主義のちがい

先ほど「12月決算の会社が11月分までの家賃は毎月現金で支払っていたが、12月の家賃だけ1ヶ月支払いが遅れ、翌年1月に2ヶ月分をまとめて支払った」という例を紹介しました。
もし「現金主義」でこれを計上する場合、損益計算書に計上される家賃は今年度実際に支払った11ヶ月分のみとなり、12月分は次年度の損益計算書に計上することになります。

3.実現主義とは

(1)実現主義の基本

費用を発生主義で計上する一方、収益の計上には「実現主義」の考え方が用いられます。
収益は原則、未実現のものを当期の損益計算に計上してはいけないことになっており、収益が実現した時点(=製品やサービスを提供し、現金や売掛金を受け取った時点)で計上することになっています。

(2)実現主義の具体例

例えば12月決算の会社で、12月20日に取引先から10万円分の商品の発注がありました。
12月25日には手付金として先に5万円が入金されたとします。納品予定は1月10日です。
この場合、12月時点では納品できていないため、今年度の収益として計上することはできず、次年度の収益として計上することになります。

4.覚えておきたい「費用収益対応の原則」

(1)費用収益対応の原則とは

れます。これを「費用収益対応の原則」といい、以下のように企業会計原則で定められています。

『費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。』(企業会計原則より引用)

費用と収益の対応形態には、以下の2つがあります。

(2)個別対応

収益を獲得するために要した費用を、獲得した収益に完全に対応させるのが個別対応です。
売上高と売上原価のように、対応関係が明確なものは個別対応を適用します。

(3)期間対応

売上原価の場合は個別対応の考え方が当てはまりますが、すべての費用について個別対応させることは困難です。
そこで、一会計期間に計上した収益に対して同一会計期間に発生した費用を対応させる方法として「期間対応」があります。
減価償却費についても、使う期間に則って費用を計上しているため、期間対応の方法を取っているといえます。

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