会社の経営にあたり、とくに製造業などで必要となるのが原価計算ですが、具体的に何を目的として行われるのでしょうか。
手順や仕訳例とあわせて、わかりやすく解説します。
1.原価計算とは何か
工業簿記にあたるもので、製品やサービスなどの原価を計算することです。
例えば製造業の場合、その製品をつくるためにかかった費用を計算します。
この費用の中には、材料費だけでなく労務費(従業員の給与など)や経費(水道光熱費など)なども含まれます。
なお、会計の処理方法が「税込経理方式」であれば税込みの価格で、「税抜経理方式」であれば税抜きの価格で計算します。
2.原価計算を行う目的
1962年に定められた原価計算基準によると、目的は以下の5つであるとされています。
①財政状態を財務諸表に記載し、経営者、出資者、債権者などに報告するため
②価格を決定する際の資料とするため
③経営管理者が原価管理を行うための資料とするため
④予算の編成や予算統制のための資料とするため
⑤経営の基本計画を立てるための資料とするため
なお、①を「財務会計目的」、②~⑤を「管理会計目的」に大別することもできます。
3.原価計算には複数の種類がある
目的ごとに分けられた複数の種類について、今回は以下の3種類をご紹介します。
全部原価計算 |
標準原価計算 |
市場調査や過去データをもとに原価の目安や目標となる額を計算すること。 予算を設定したり、実際の額と比較して問題を明確したりするために用いる。 |
実際原価計算 |
間接的な費用である販管費も含めて、実際にかかった原価を計算すること。 標準原価計算で算出した額と比較し、問題を明確にするために用いる。 |
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部分原価計算 |
直接原価計算 |
費用に増減のある変動費のみを用いて原価を計算すること。 実際の利益を分析したり、予算を設定したりするために用いる。 |
なお、「実際原価計算」は、さらに以下の2種類に分けられます。
実際原価計算 |
総合原価計算 |
ある期間の総製造原価を同期間の総生産量で割って、製品1個あたりの平均の製造原価を計算すること。 計算方法が簡単で、大量の製品を長期間製造する製造業などで用いられる。 |
個別原価計算 |
1件の注文ごとに原価を計算すること。 建設業などで、1件ごとの原価率をみる場合に用いる。 |
4.原価計算の手順と仕訳例
計算の手順の一例を、仕訳例とともにご紹介します。
(1)手順1:費目別原価計算
費用を「材料費」「労務費」「経費」の費目に分けて、さらにそれぞれを「直接費」「間接費」に分け、全部で6つに分類します。
なお、ここには経理や営業といった部署の給与や賞与などは含みません。
仕訳例 |
解説 |
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借方 |
貸方 |
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材料費 |
買掛金 |
「直接費」にあたるもの |
労務費 |
未払費用 |
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経費 |
未払金 |
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製造間接費 |
買掛金 |
「間接費」にあたるもの |
製造間接費 |
未払費用 |
|
製造間接費 |
未払金 |
(2)手順2:部門別原価計算
「手順1」で計上した「製造間接費」について、根拠となるデータをもとに、さらに各部門に分けて計上します。
ここでは、「加工部門」「組立部門」の2つの部門を用いて説明します。
仕訳例 |
解説 |
|
借方 |
貸方 |
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製造間接費 |
製造間接費 |
「製造間接費」を2つの部門に分ける |
製造間接費 |
(3)手順3:製品別原価計算
まず、「手順1」で計上した「直接費」を「仕掛品」に振り替えます。
仕訳例 |
解説 |
|
借方 |
貸方 |
|
仕掛品 |
材料費 |
「直接費」を「仕掛品」に振り替え |
労務費 |
||
経費 |
次に、「手順2」でそれぞれの部門に分けた「製造間接費」を「仕掛品」に振り替えます。
仕訳例 |
解説 |
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借方 |
貸方 |
|
仕掛品 |
製造間接費(加工部門) |
それぞれの部門の「製造間接費」を「仕掛品」に振り替え |
製造間接費(組立部門) |
なお、上記のような「仕掛品」への振り替えを行う場合、月初と月末の仕掛品振替の仕訳は必要ありません。
ただしこの場合、月初仕掛品を経費に分ける仕訳を計上する必要があります。
ここまでできたら、最後に「仕掛品」を製品ごとの原価として振り分けます。
仕訳例 |
解説 |
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借方 |
貸方 |
|
製品A |
仕掛品 |
「仕掛品」を製品ごとの原価に振り替え |
製品B |
5.まとめ
工業簿記で出てくる原価計算とは、製品やサービスなどの原価を計算することで、経営者などへの報告や価格設定などの資料として用いられます。
また、この計算には複数の種類があり、目安となる原価の算出や実際にかかった原価の算出など、目的に応じて使い分けられています。
計算の手順は少々複雑ではありますが、経営判断における重要な指標になるため、しっかりと理解して行うようにしましょう。
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